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2020/04/27

新型コロナウィルスの蔓延に関連する使用者の対応についてのQ&A(休業に関して)

1 新型コロナウィルスに関連して従業員を休業させる場合,休業手当を支払う必要はありますか?

A. 前提として,労働基準法26条において,「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定められております。

 この「使用者の責に帰すべき事由」に関して,今回の新型コロナウィルスによる休業に関連して,厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(令和2年4月24日時点版,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q2-1)によれば,「不可抗力による休業の場合」は,使用者の責に帰すべき事由に当たらず,使用者に休業手当の支払義務がないとされています。そして,ここでいる不可抗力とは,

① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

の2つの要件を必要とされています。

 そして,①に関しては,今回の新型コロナウィルスの蔓延やこれに伴う緊急事態宣言や休業要請がこれに該当すると考えられます。他方,②に関しては,個別具体的な検討が必要でありますが,例えば,在宅勤務(テレワーク)等の代替手段の可能性,休業を求める期間の長短,休業回避の具体的努力などを総合的に勘案して,判断することになると考えられます。

  したがって,皆様の業種や休業を求める人員の職種,休業の回避に向けた具体的対応によって,結論が変わると考えます。

  ただし,休業手当を支払った場合において,例えば直近1か月間の売上が前年同時期と比べて5%減少している等の要件を満たしている場合には,雇用調整助成金(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html)を申請することができますので,その点も加味して最終的な結論をご検討頂きたいと考えます。

2 新型コロナウイルスに感染した従業員を休ませる場合には,休業手当を支払う必要はありますか。

A. この場合には,「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられますので,新型コロナウィルスに感染した従業員に対する休業手当の支払義務はありません。

 なお,この場合,一定の要件を満たす場合には,療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されますので,加入する保険組合等に確認をお願いいたします。

3 新型コロナウィルスに感染した従業員と同じ職場の従業員を休業させる場合には,休業手当を支払う必要はありますか?

A. この点は,1の「不可抗力による休業の場合」に該当するかどうかを個別具体的に検討すべきことになりますが,一般論としては,医師や保健所等の行政機関からの指示がない限り,不可抗力にはあたらず,「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるとして,休業手当を支払う必要があると考えます。もちろん,業種や職場の状況,休業要請の有無,感染を疑われる従業員の在宅勤務(リモートワーク)の可能性の有無等により,具体的結論は変わる可能性はありますが,使用者の判断としては,可能な限り,休業手当を支払うという判断をすることが望ましいと考えます。

  この点,厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(令和2年4月24日時点版)によれば,「「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても,職務の継続が可能である方について,使用者の自主的判断で休業させる場合には,一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり,休業手当を支払う必要があります。」とされています。

4 従業員が,例えば,新型コロナウィルスの蔓延により,自宅で子どもの面倒を見なければならないなどの理由により休業する場合,休業手当を支払う必要はありますか?

A. 休業しなければならない原因が使用者側にない限り,使用者に,賃金の支払義務はありません。いわゆるノーワークノーペイの原則によります。

 なお,厚生労働省の新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金を創設しており(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html),この情勢の申請の受付を令和2年4月15日に開始しております。これは,臨時休業した小学校や特別支援学校,幼稚園,保育所,認定こども園などに通う子供を世話するために,令和2年2月27日からから6月30日の間に従業員(正規・非正規を問わず)に有給の休暇(法定の年次有給休暇を除く)を取得させた会社に対し,休暇中に支払った賃金100%相当額(1日8,330円が上限)を助成する制度ですので,こちらの助成金を活用して,休業手当を支払うことも検討できると考えます。

5 緊急事態宣言や休業要請を受けて事業を休止し,労働者を休業させる場合,休業手当を支払う必要はありますか?

A. この場合においても,1の「不可抗力による休業の場合」に該当するかどうかを個別具体的に検討すべきことになります。緊急事態宣言や休業要請を受けている場合においても,従業員に在宅勤務(テレワーク)等で対応可能かどうか,他に就労させることが可能な業務があるかどうかを検討し,何らかの方法が可能ということであれば,休業手当の支払が必要になります。